
こんにちは。
今日もまた坊っちゃんの続きを読んでいきます。
今日は第4章です。
今日もまたちょっと長いんですけど、お付き合いください。
学校には宿直があって、職員が代わる代わるこれを務める。
宿直というのは、泊まり込みで仕事をする当番のことですね。
はい。
ただし、狸と赤シャツは例外である。
なんでこの両人が当然の義務を免れるのかと聞いてみたら、奏任待遇だからという。
両人、これは2人ということですね。狸と赤シャツ2人のことを指しています。
免れる。
これ、まぬかれるというのは、ちょっと古い読み方で、今はおそらく「まぬがれる」という読み方の方が一般的だと思います。
どうしてこの宿直の義務を免れるのかと聞いてみたら、奏任待遇だから。
奏任待遇という言葉は私も初めて聞いたので、ちょっと調べてみたんですが、奏任というのが、昔の偉い役職の名前で、その待遇を受ける。
なので、狸と赤シャツは偉い人の待遇を受ける、扱いを受けるから、宿直をしなくてもいいんだそうです。
面白くもない。
月給はたくさん取る。
時間は少ない。
それで宿直を逃れるなんて不公平があるものか。
勝手な規則をこしらえて、勝手な規則を作って、それが当たり前だというような顔をしている。
よくまあ、あんなに図々しくできるものだ。
これについてはだいぶ不平であるが、山嵐の説によると、いくら一人で不平を並べたって通るものじゃないそうだ。
あ、ちなみに狸と赤シャツっていうのは、校長先生と教頭先生のことですね。
山嵐は同僚の先生です。
坊っちゃんが一人で不満を言ったって、一人の意見は通らないよと言われました。
山嵐に。
一人だって、二人だって正しいことなら通りそうなものだ。
山嵐はmight is rightという英語を引いて説諭を加えたが、なんだか要領を得ないから聞き返してみたら、強者の権利という意味だそうだ。
強者の権利。説諭というのは、説明ですね。
強者の権利。
ま、強者ですよね。
狸と赤シャツは校長と教頭なので、学校の中では権力のある人たちなので、上の人たち、偉い人たちの権利として、
うーん、そういう義務を免れたりするということを山嵐から言われたということですね。
はい。
強者の権利ぐらいなら、昔から知っている。
今更山嵐から講釈を聞かなくてもいい。
講釈、説明ですね。
強者の権利と宿直とは別問題だ。
狸や赤シャツが強者だなんて、誰が承知するものか。
坊っちゃんは狸と赤シャツが強者、偉い人、権力のある人っていうことを認めていないわけですね。
はい。
議論は議論として、この宿直がいよいよ俺の番に回ってきた。
一体疳性だから、夜具布団などは自分のものへ楽に寝ないと寝たような心持ちがしない。
この疳性というのも、私はちょっと知らない言葉だったので、調べてみたところ、神経質という意味だそうです。
坊っちゃんは神経質なんですね。細かいことをが気になる性格だから、夜具布団、これは多分、昔の言い方なんでしょうけど、布団のことですね。
坊っちゃんは神経質なので、自分の布団じゃないと寝た気がしない。
ゆっくり休めないそうです。
皆さんはどうですか?
例えば人の家に泊まりに行ったり、ホテルとかに行って、いつもと違う布団ではなかなか寝付けないっていう人もいますよね。
はい、坊っちゃんもそうみたいです。
子供の時から友達の家へ泊まったことはほとんどないくらいだ。
友達の家でさえ嫌なら、学校の宿直はなおさら嫌だ。
この嫌という字、今とちょっと漢字が違いますね。
これが四十円のうちへこもっているなら仕方がない。
我慢して勤めてやろう。
四十円というのは、坊っちゃんがもらっている月給です。
先生の仕事をして毎月もらうお給料が四十円でしたね。
この宿直、嫌だけれども、宿直をするというのも、この給料のうちに含まれてるんだったら、まあ仕方がない。
ね、「こもっている」と書いてますが、まあ、より自然な言い方をすると、含まれているなら仕方がない、我慢して努めてやろう。
はい。
次の段落に行きます。
教師も生徒も帰ってしまった後で一人ぽかんとしているのは、ずいぶん間が抜けたものだ。
宿直部屋は、教場の裏手にある寄宿舎の西はずれの一室だ。
寄宿舎っていうのは、生徒たちが泊まる寮みたいなものですね。
ちょっと入ってみたが、西日をまともに受けて苦しくていたたまれない。
西日、西から入ってくるお日様の光。
太陽の光ですね。
田舎だけあって、秋が来ても気長に暑いもんだ。
生徒のまかないを取り寄せて晩飯を済ましたが、まずいには恐れ入った。
まかないというのは、通常よく使うのは、例えばレストランとかで仕事をしていてまかないが出るとか、まかないがついているって言ったら、
なんだろう、そこでお給料とは別に食事を出してくれるっていうことですね。
私も学生の時、レストランでバイトしてた時に、そこはまかないがついていたので、自分のバイトのシフトが終わった後、ご飯を食べてから家に帰ってました。
そういうのをまかないって言います。
多分坊っちゃんも、この寄宿舎の生徒たちが、寄宿舎の食堂で食べるご飯をまかないとして、そこで、宿直室で食べていたんでしょうね。
はい。
でもそのご飯がまずいと、また文句を言っています。
よくあんなものを食って、あれだけに暴れられたもんだ。
それで晩飯を急いで4時半に片付けてしまうんだから豪傑に違いない。
4時半に晩御飯を片付けるって早いですね、確かに。
豪傑。
これもあまり一般的ではない言葉ですけど、うーん、なんだろう、豪快みたいな。
小さいことにこだわらないみたいな意味だそうです。
飯は食ったが、まだ日が暮れないから寝るわけにいかない。
ちょっと温泉に行きたくなった。
前回第3章で温泉の話が出てきましたね。
坊っちゃんはこの街のことをすごく田舎で東京の足元にも及ばないと言ってバカにしていたけれども、唯一、温泉だけはすごく褒めていました。
ちょっと温泉に行きたくなった。
宿直をして外へ出るのはいいことだか悪いことだか知らないが、こうつくねんとして重禁錮同様な憂目にあうのは我慢のできるもんじゃない。
うん。
宿直をして外へ出るのはいいことか悪いことか知らないがと言ってますが、悪いことですよね。
仕事中ですから、勤務中に外に出てはいけないんじゃないかなと思います。
つくねんとして。
つくねん、何でしょう。
つくねんとしてというのは、一人やることもなくじっとしていることだそうです。
重禁錮同様な憂目にあう。
禁錮というのは、えっと、悪いことをして警察に捕まって牢屋に閉じ込められている。
例えば禁錮10年って言ったら、何か罪を犯して10年間刑務所に入ってなくちゃいけないってことです。
そういうね、ま、悪いことして捕まっているのと同じような憂目に遭う、ひどい目に遭うのは我慢のできるもんじゃない。
初めて学校へ来た時、「宿直の人は?」と聞いたら、ちょっと用足しに出たと小使が答えたのを妙だと思ったが、自分に番が回ってみると、思い当たる。
第何章だったか忘れましたけど、坊っちゃんが「当直の人は?」って聞いたら、小使が、用足しに出た、用事があって出かけているって答えた場面がありました。
で、それを妙だなと思っていたけれども、いざ自分の番が来ると、理解できるということですね。
出る方が正しいのだ。
俺は小使に「ちょっと出てくる」と言ったら「何かご用ですか?」と聞くから「用じゃない。温泉へ入るんだ」と答えてさっさと出かけた。
坊ちゃんはすごく正直ものですね。
「何かご用ですか?」って聞かれたら、「あ、はい、ちょっと」ってね、適当に答えておけばいいものを、正直に温泉に行ってくると答えています。
赤手ぬぐいは宿へ忘れてきたのが残念だが、今日は先方で借りるとしよう。
先方というのは行った先で。
なので、温泉で手ぬぐいを借りるとしようということですね。
はい。
次の段落です。
それからかなりゆるりと出たり入ったりして、ようやく日暮れ方になったから、汽車へ乗って古町の停車場まで来て降りた。
学校まではこれから4丁だ。
4丁。
この丁というのは昔の距離の単位だそうです。
えっと、調べたところによると約109メートルだそうです。だからまあ400メートルちょっとですね。4〜500メートル。
この丁という字、日本で住所を言う時に〇〇町一丁目とか二丁目とか三丁目とか言うんですね。
私が住んでるところも一丁目なんですけど、その時に使うのがこの丁という字なんですよ。
もしかしたらなんか関係あるのかなと思いました。
訳はないと歩き出すと、向こうから狸が来た。
ここ、ここ、わけはないと歩き出すとっていうところの「わけはない」っていうのがちょっと私もどういう意味か分からなくて、色々調べたんですけど、
うん、あの、「あ、これだ!」というのがちょっと見つかりませんでした。
普通、わけはないって言うと、そんなわけはないとか、そんなはずはないみたいな意味で使いますけど、
こうやって文頭にね、文の初めに来るのはちょっとあんまり見かけないので、どういう意味か、うーん...ちょっと私も分かりませんでした、ここの部分。
なのであまり気にせず進みましょう。
わけはないと歩き出すと、向こうから狸が来た。
狸は校長先生ですね。
狸は、これからこの汽車で温泉へ行こうという計画なんだろう。
すたすた急ぎ足にやってきたが、すれ違った時、俺の顔を見たからちょっと挨拶をした。
すると狸は、あなたは今日は宿直ではなかったですかね?と真面目腐って聞いた。
普通狸は坊っちゃんにとっては上司ですから、仕事中に仕事をサボって温泉に入りに来てるということがバレたら、やばいってなりますよね。
狸に出くわしたらやばいってなると思うんですけど、坊っちゃんは全然そんな様子はなく、普通に挨拶をしたそうです。
なかったですかねぇもないもんだ。
2時間前、俺に向かって「今夜は初めての宿直ですね。ご苦労様。」と礼を言ったじゃないか。
校長なんかになると嫌に曲がりくねった言葉を使うもんだ。
曲がりくねった言葉。
ま、捻くれたというか、遠回しな言葉を使うもんだ。
俺は腹が立ったから「ええ、宿直です。宿直ですから、これから帰って泊まることは確かに泊まります。」と言い捨てて、すまして歩き出した。
面白いですね、坊っちゃん。
すごく開き直ってるというか、「宿直ですけど、何か?」みたいな感じですね。
竪町の四つ角まで来ると、今度は山嵐に出っくわした。
出っくわした。出くわした。
どうも狭いところだ。
出て歩きさえすれば必ず誰かに会う。
おい、君は宿直じゃないかと聞くから、うん、宿直だと答えたら、宿直がむやみに出て歩くなんて不都合じゃないかと言った。
そうですよね。
勤務中ですからね、一応。
ちっとも不都合なもんか。
出て歩かない方が不都合だと威張ってみせた。
君のズボラにも困るな。
校長か教頭に出会うと面倒だぜと、山嵐に似合わないことを言うから。
ズボラっていうのは、いい加減な性格のことです。
校長か教頭に会うと面倒だよって言うから、あ、校長にはたった今会った。
暑い時には散歩でもしないと宿直も骨でしょ、と校長が俺の散歩を褒めたよ、と言って面倒くさいからさっさと学校へ帰ってきた。
校長は本当に褒めたんでしょうかね、散歩を。
本当に、本心で褒めたんでしょうか。
それとも坊ちゃんが勘違いをしているだけでしょうか。
坊ちゃんが褒められたって思い込んでるだけでしょうか。
骨でしょうと言ってますね。骨。
これは大変でしょうっていう意味です。
例えば骨が折れるって言ったら、もう本当にね、骨が折れる時にももちろん言いますけど、骨の折れるような仕事とか言ったら、すごく大変な仕事という意味です。
次の段落に行きます。
それから日はすぐ暮れる。
暮れてから2時間ばかりは小使を宿直部屋へ呼んで話をしたが。小使もちょっといい迷惑ですね。
それも飽きたから寝られないまでも床へ入ろうと思って、寝巻きに着替えて蚊帳をまくって赤いケットをはねのけて、とんと尻餅をついて仰向けになった。
寝巻きはパジャマですね。
蚊帳というのは、昔は寝るとき、布団を敷いて、その周りをこう薄いネットのようなもので囲んでいたんですね。
何のためにかというと、蚊が入ってくるのを防ぐためです。
虫が入ってこないように蚊帳というものを、布団の周りにこうね、何て言ったらいいかな。
写真を見た方が早いかもしれないですね。
こういう布団の周りにつけるものです。
蚊帳と言います。
蚊帳をまくって赤いケット、毛布をはねのけて寝床に着きました。
俺が寝るときにトンと尻餅をつく。
お尻をこうやって尻餅をつくのは、子供の時からの癖だ。
悪い癖だと言って小川町の下宿にいた時分、2階下にいた法律学校の書生、書生、学生のことですね。
(書生)が、苦情を持ち込んだことがある。
法律の書生なんてものは弱いくせに、やに口が達者なもので、愚なことを、馬鹿らしいことを長ったらしく述べたるから、
寝る時にどんどん音がするのは俺の尻が悪いのじゃない。
下宿の建築が粗末なんだ。
掛け合うなら下宿へ掛け合えとへこましてやった。
坊っちゃんが寝る時にどんと尻餅をついて布団に入るので、下の階の人が苦情を言ってきたんですね。
でも、坊っちゃんはその時も逆切れして、自分のせいじゃない、
この建物自体が粗末だから、だから悪いんだと。
自分じゃなくてそのなに?下宿にね、その建物を管理してる大家さんに言えって言ってへこませてやった。
このへこむというのは、何かがぽこっとへこむことですけど、人をへこませるというと落ち込ませるという意味ですね。
この宿直部屋は2階じゃないから、いくらどしんと倒れても構わない。
なるべく勢いよく倒れないと寝たような心持ちがしない。
「ああ、愉快だ」と足をうんと伸ばすと、なんだか両足へ飛びついた。
坊ちゃんは大好きな温泉にも入って、ああ、愉快だって機嫌よくいい気分で寝ようとしたんですけど、足を伸ばしたら何かが両足に飛びついた。
なんでしょう。
ザラザラしてノミのようでもないから、こいつぁと驚いて、足を2、3度ケットの中で振ってみた。
するとザラザラと当たったものが急に増え出して脛が、足の脛が5、6箇所、腿が2、3箇所、
尻の下でぐっちゃりと踏みつぶしたのが1つ、へそのところまで飛び上がったのが1つ。
いよいよ驚いた。
早速起き上がってケットをばっと後ろへ放ると、布団の中からバッタが5〜60飛び出した。
気持ち悪いですね。
正体の知れない時は多少気味が悪かったが、バッタと相場が決まってみたら急に腹が立った。
相場が決まるっていうのは、普通は、相場が決まっているっていうと、一般的に常識的にそういう風に考えられているみたいな意味で使うんですけど。
ここでは多分バッタだと分かると、急に腹が立ったというような意味です。
バッタのくせに人を驚かしやがって。
どうするか見ろと、いきなり括り枕をとって、括り枕っていうのは、昔の、丸い形の端っこをこうくくってあるような枕だそうです。
括り枕を取って2、3度叩きつけたが、相手が小さすぎるから勢いよく投げつける割に効き目がない。
仕方がないからまた布団の上へ座って、煤掃の時にござを丸めて畳を叩くように、そこら近辺をむやみに叩いた。
煤というのは、何か物を燃やした時に出るあの黒い粉みたいな、それを掃除する時に、ござを丸めて畳を叩くんでしょうか、煤を掃く時に。
ござっていうのは、これも見せた方が早いかもしれませんね。
こういうね、日本風のカーペットみたいなやつです、
ござを丸めて畳をこう叩いて、煤を払って掃除をする時のようにこう叩いた。
バッタが驚いた上に、枕の勢いで飛び上がるものだから、俺の肩だの頭だの鼻の先だのへくっついたり、ぶつかったりする。
顔へついたやつは枕で叩くわけにいかないから、手で掴んで一生懸命に叩きつける。
忌々しいことに、腹立たしいことに、いくら力を出してもぶつかる先が蚊帳だから。蚊帳。
この網みたいなね、ものだから、ふわりと動くだけで少しも手応えがない。
壁とかだったらね、パーンってなりますけど、蚊帳にぶつかっても手応えがない。
バッタは叩きつけられたまま蚊帳へつらまっている。
蚊帳へ捕まっている。
死にもどうもしない。
ようやくのことに30分ばかりで、バッタは退治た。
バッタは退治したということですね。
30分も坊っちゃんはバッタと格闘してたみたいです。
箒を持ってきて、バッタの死骸を掃き出した。
小使が来て、何ですかと言うから、何ですかもあるもんか。
バッタを床の中に飼っとくやつが、どこの国にある。
間抜け目!と叱ったら、私は存じませんと弁解をした。
私は知りませんと言い訳をした。
存じませんで済むかと箒を縁側へ放り出したら、小使は恐る恐る箒を担いで帰っていった。
縁側、ちょっと漢字が今使われるのはこれ。
縁という字、木へんじゃなくて、糸へんの縁側ですけど、これもちょっとお見せすると、
はい、こんな感じの昔の日本家屋には、こういう縁側と呼ばれるスペースがありました。
これです。
俺は早速、寄宿生を3人ばかり総代に呼び出した。
生徒、あ、坊っちゃんは生徒の仕業だと思ったわけですね。
なので、3人ばかり代表として呼び出した。
ちょっと来いと。
すると6人出てきた。
6人だろうが10人だろうが構うものか。
寝巻きのまま腕まくりをして談判を始めた。
談判っていうのは、何か争い事、揉め事があった時の、解決するための話し合いのことですね。
なんでバッタなんか俺の床の中へ入れた。
バッタたあなんぞな。
バッタって何のことですか?みたいな感じでしょうか。
方言ですね。
と、真っ先の1人が言った。
最初の一人が言った。
やに落ち着いていやがる。
この学校じゃ校長ばかりじゃない。
生徒まで曲がりくねった言葉を使うんだろう。
バッタを知らないのか。
知らなけりゃ見せてやろうと言ったが、生憎外に掃き出してしまって1匹もいない。
また小使を呼んで、さっきのバッタを持って来いと言ったら、もう掃き溜めへ捨ててしまいましたが、拾ってまいりましょうか、と聞いた。
掃き溜めっていうのは、ごみを溜めておく場所ですね。
すぐ拾ってこいと言うと、小使は急いで駆け出したが、やがて半紙の上へ10匹ばかり乗せてきて、どうもお気の毒ですが、生憎夜でこれだけしか見当たりません。
明日になりましたらもっと拾ってまいります、と言う。
小使まで馬鹿だ。
坊っちゃんはすごい人使いが荒いですね。小使にこんなことをさせて。
しかもバカだとけなしています。
俺はバッタの1つを生徒に見せて、バッタたぁこれだ。
バッタとはこれだ。
大きな図体をしてバッタを知らないったぁ何のことだ?
と言うと、1番左の方にいた顔の丸いやつが、そりゃイナゴぞな、もし、と生意気に俺をやり込めた。
イナゴはバッタに似た虫ですね。
バッタじゃなくてそれはイナゴですよ、先生、と。
はい、べらぼうめ。
バカ野郎。
イナゴもバッタも同じもんだ。
第一、先生をつらまえて、「な、もし」たぁなんだ。
「な、もし」っていうのをよくね、この、ここの生徒たちは言いますよね。
「イナゴぞな、もし」とかね。
ま、方言だと思いますけど。
な、もしってなんだそれは。
菜飯。
なんでしょう。
菜飯。
あ、こんなのだそうです。菜飯。
菜飯は田楽の時より他に食うもんじゃない。
田楽は、田楽というのも食べ物で、はい、こんなのです。
味噌味です。
「な、もし」「な、もし」って言うから、ちょっと馬鹿にしてね、こう駄洒落を言ってるんですね、菜飯って。
「菜飯は田楽の時より他に食うもんじゃない」と、あべこべに、あべこべにというのは反対にとか逆にという意味ですね。
逆にやり込めてやったら、「なもし」と「菜飯」とは違うぞなもしと言った。
いつまで行っても、なもしを使うやつだ。
イナゴでもバッタでも、なんで俺の床の中へ入れたんだ?
俺がいつバッタを入れてくれと頼んだ?
誰も入れやせんがな。
入れないものがどうしてそこの中にいるんだ?
イナゴはぬくいところが好きじゃけれ、大方一人でお入りたのじゃろう。
自分で入ったんだろう。
バカ言え。
バッタが一人でお入りになるなんて、バッタにお入りになられてたまるもんか。
さあ、なぜこんないたずらをしたか言え。
お入りになるってね、丁寧な言葉ですね。すごく丁寧な言葉をバッタというね虫に対して使ってるのがちょっと面白いですね、ここ。
言えてて...入れん物を説明しようがないかな。
言え、何でしたか言え!って言われても、自分たちしてないんだから、どうやって説明したらいいんですか。
説明のしようがありません、って言ってます。
ケチな奴らだ。
ケチっていうのは普通お金を使いたがらない人とか、何か人にあげるのを嫌がる人みたいな、そういう意味ですけど、
ここでは多分そのお金のこととかじゃなくって「つまらないやつだ」みたいな感じの意味だと思います。
自分で自分のしたことが言えないくらいなら、てんでしないがいい。
うん、自分で自分のしたことに責任が持てないんだったら、最初からしない方がいいと。
証拠さえ上がらなければ、しらを切るつもりでずぶとく構えていやがる。
「しらを切る」は、知らないふりをする。
知りませんって突き通すことですね。
俺だって中学にいた自分は、少しはいたずらもしたもんだ。
しかし、誰がした?と聞かれた時に、尻込みをするような卑怯なことは、ただの一度もなかった。
したものはしたので、しないものはしないに決まってる。
俺なんぞは、俺なんかは、いくらいたずらをしたって潔白なものだ。
嘘をついて罰を逃げるくらいなら、初めからいたずらなんかやるものか。
いたずらと罰はつきもんだ。
罰があるからいたずらも心持ちよくできる。
いたずらだけで罰はごめん被るなんて、下劣な根性がどこの国に流行ると思ってるんだ。
坊っちゃんはとっても正直で、自分でも潔白と言ってますけど、潔ぎいい性格なので、もう罰を受ける覚悟でいたずらをしていたんですね。
うん。
金は借りるが返すことはごめんだという連中はみんな、こんな奴らが卒業してやる仕事に相違ない。
このね、今「え?バッタ?知りませんよ」って言ってるこの子たちみたいな子達が卒業して、
将来お金を借りるけど返しませんよみたいな、そういうずるい仕事に就くんだと言っています。
全体中学校へ何しに入ってるんだ?
はい、全体って言ってますけど、一体っていう意味ですね。一体どうして、何をしにここに来てるんだ?
はい。
学校へ入って嘘を吐いて誤魔化して、陰でこせこせ、こそこそ、生意気な悪いいたずらをして、
そうして大きな面で卒業すれば教育を受けたもんだと勘違いをしていやがる。
話せない雑兵だ。
大きな面でというのは、偉そうにということですね。
雑兵はこれも私も聞き慣れない言葉だったので調べました。
調べたところ、昔のお侍さんとかの時代の一番身分の低い、位の低い兵士のことを雑兵って言っていたそうです。
なので、この子供たちを馬鹿にして使っている表現ですね。
俺はこんな腐った了見、腐った考えのやつらと談判するのは胸くそが悪いから、そんなに言われなきゃ聞かなくていい。
中学校へ入って上品も下品も区別ができないのは気の毒なものだと言って、6人を追っ放してやった。
俺は言葉や様子こそあまり上品じゃないが、心はこいつらよりもはるかに上品なつもりだ。
坊っちゃんはすごいプライドがありますね。
6人は悠々と引き上げた。
上辺だけは、上っ面、表面上だけは教師の俺よりよっぽど偉く見える。
実は落ち着いているだけなお悪い。
俺には到底これほどの度胸はない。
それからまた床へ入って横になったら、さっきの騒動で、蚊帳の中はぶんぶん唸っている。
また蚊帳の中に虫が入ってきたんですね。
手燭、これろうそくですね。
手燭をつけて1匹ずつ焼くなんて面倒なことはできないから、釣手を外して長く畳んでおいて、
部屋の中で横竪十文字に振るったら、環が飛んで、手の甲を嫌というほどぶった。
蚊帳の釣手、吊るしてある部分を外して、畳んでおいて、部屋の中で横縦十文字に振ったら、環というのはこれ、輪っかという意味があるので、
なんかこう輪っかの金具か何かでしょうね。それが飛んで、振り回したもんだから、飛んで、手の甲を嫌というほどぶった。
3度目に床へ入った時は少々落ち着いたが、なかなか寝られない。
時計を見ると10時半だ。
考えてみると厄介なところへ来たもんだ。
一体中学の先生なんて、どこへ行ってもこんなものを相手にするなら気の毒なものだ。
よく先生が品切れにならない。
品切れ。
先生は物じゃないので、普通品切れになるとかいう表現は使わないですけど、こんな大変な仕事なのによく先生が足りなくならないなあって言ってますね。
よっぽど辛抱強い朴念仁がなるんだろう。
朴念仁、これもちょっと私意味が分からなかったんですけど、ま、無口で愛想のない人、そういう人のことを朴念仁って言うんだそうです。
そんな人が先生になるんだろう。
俺には到底やりきれない。
それを思うと、清なんてのは見上げたものだ。
清が出てきましたね。坊っちゃんの大好きな清。
見上げたものだ。
見上げるというのは、ま、尊敬できるということですね。
教育もない身分もない婆さんだが、人間としてはすこぶる尊い。
たっとい。これ普通は「とうとい」と読みます。
尊いというのは、すごく貴重で価値があるということです。
今まではあんなに世話になって別段ありがたいとも思わなかったが、こうして一人で遠国、遠いところへ来てみると、初めてあの親切さが分かる。
うん、離れてみて清への感謝を実感していますね。
越後の笹飴が食いたければ、清が食べたいと言っていた越後の笹飴。
食いたければわざわざ越後まで買いに行って、食わしてやっても食わせるだけの価値は十分ある。
清は俺のことを欲がなくって真っすぐな気性だと言って褒めるが、褒められる俺よりも褒める本人の方が立派な人間だ。
なんだか清に会いたくなった。
清のことを考えながらのつそつしていると。
のつそつ、なんでしょう、のつそつ。
のつそつしているっていうのは、することがなくて退屈している様子だそうです。
突然、俺の頭の上で数で言ったら3、40人もあろうか。
2階が落っこちるほど、どんどんどんと拍子を取って床板を踏み鳴らす音がした。
拍子を取るっていうのはリズムよくっていう感じですね。
すると足音に比例した大きな鬨の声が起こった。
鬨の声。
この表現も私は初めて聞きました。
どんな意味か調べてみます。
何か戦の時とか戦いをするような時に、大勢で「頑張ろう!」っていう感じで叫び声をあげる、その声のことだそうです。
だからとにかく2階が騒がしかったんですね、きっと。
俺は何事が持ち上がったのかと驚いて飛び起きた。
飛び起きる途端に、はは〜、さっきの意趣返しに生徒が暴れるのだなと気が付いた。
意趣返し、仕返しです。
さっきの仕返しに、坊ちゃんが部屋に呼びつけて怒ったから。
バッタを蚊帳にいれたな、バッタを布団に入れたなと言って怒ったから、生徒たちが上で暴れてるんだなあと気づいた。
手前の悪いことは悪かったと言ってしまわないうちは罪は消えないもんだ。
悪いことは手前たちに覚えがあるだろう。
手前っていうのは、自分のってことですね。
自分の悪いことは悪かったって認めないと、認めるまでは罪は消えないと。
身に覚えがあるだろう。
本来なら寝てから後悔して明日の朝でも謝りに来るのが本筋だ。
謝りに来るべきだ。
生徒たちがね。
たとい、たとえ謝らないまでも、恐れ入って静粛に寝ているべきだ。
それをなんだこの騒ぎは。
寄宿舎を立てて豚でも買っておきやしまいし、気狂いじみた真似も大抵にするがいい。
豚じゃあるまいし。
気狂いじみた。
気狂いというのは頭がおかしいみたいな、あんまり良くない言葉ですね。
はい。
そんなことをするのもいい加減にしろと。
どうするか見ろと、寝巻きのまま宿直部屋を飛び出して、梯子段を三股半に2階まで踊り上がった。
階段を三股半、三段飛ばしにして、2階まで踊り上がった。
すると不思議なことに今まで頭の上で確かにドタバタ暴れていたのが、急に静まりかえって、人声どころか足音もしなくなった。
これは妙だ。
ランプは既に消してあるから、暗くてどこに何がいるか、判然と分からないが、よくわからないが、人気のあるとないとは様子でも知れる。
長く東から西へ貫いた廊下には、ネズミ1匹も隠れていない。
廊下の外れから月がさして、月の光が入ってきて、はるか向こうが際どく、かすかに明るい。
どうも変だ。
俺は子供の時からよく夢を見る癖があって、夢中に、夢を見ている最中に、はね起きて、分からぬ寝言を言って人に笑われたことがよくある。
16、7の時、ダイヤモンドを拾った夢を見た晩なぞは、むくりと立ち上がってそばにいた兄に、「今のダイヤモンドはどうした?」と非常な勢いで。
ね、普通じゃない勢いで尋ねたくらいだ。
その時は3日ばかり家中の笑い草になって。
笑いの種になって大いに弱った。
ことによると、ひょっとすると、今のも夢かもしれない。
しかし確かに暴れたに違いないが、と廊下の真ん中で考え込んでいると、月のさしている向こうのはずれで、
1、2、3、わあ!と3、40人の声が固まって響いたかと思う間もなく、前のように拍子を取って、一同が床板を踏み鳴らした。
それ見ろ、夢じゃない。やっぱり事実だ。
静かにしろ、夜中だぞと、こっちも負けんくらいな声を出して廊下を向こうへ駆け出した。
俺の通る道は暗い。
ただ、外れに見える月明かりが目印だ。
俺が駆け出して二間も来たかと思うと、廊下の真ん中で硬い大きなものに向こう脛、足の脛の部分をぶつけて、
「あ、痛い!」が頭へ響く間に体はすとんと前へ放り出された。
「痛い」ってもう頭で思う間もなく、体はすとんって前に放り出された。
こん畜生、クソってことですね。
こん畜生!と起き上がってみたが、駆けられない。
気はせくが、気持ちは前に言ってるんだけど、足だけは言うことを聞かない。
じれったいから一本足で飛んできたら、もう足音も人声、私さっきこれ「じんせい」って読みましたけど「ひとごえ」「じんせい」2つ読み方があるみたいです。
人声も静まりかえってしんとしている。
しん、シーンとしているっていうのは、静かな様子をシーンとしているって言いますけど、普通はひらがなとかカタカナで書きます。
この「森」という字を使っているのは面白いですね。夏目漱石、作者の夏目漱石が敢えて、この森という字を使っているんだと思います。
いくら人間が卑怯だってこんなに卑怯にできるものじゃない。
まるで豚だ。
こうなれば隠れているやつを引きずり出して謝らせてやるまでは引かないぞと心を決めて、寝室の1つを開けて中を検査しようと思ったが、開かない。
錠をかけてあるのか、鍵をかけてあるのか、机か何かを積んで立てかけてあるのか、押しても押しても決して開かない。
今度は向こう合わせの北側の部屋を試みた。
開かないことはやっぱり同然である。
同じように開かない。
俺が戸を開けて中にいるやつをひっつらまえてやろうとイラっていると、イライラしていると、また東の外れで、これ何て読むんでしたかね?
「ときのこえ」でした。
鬨の声と足拍子が始まった。
この野郎。
申し合わせて、話し合って、東西相応じて、合わせて、俺を馬鹿にする気だなとは思ったが、さて、どうしていいか分からない。
正直に白状してしまうが、俺は勇気のある割合に知恵が足りない。
坊っちゃん、正直に言うと、勇気がある割には知恵が足りない。
頭が良くないって言ってます。
こんな時にはどうしていいかさっぱり分からない。
分からないけれども、決して負けるつもりはない。
このままに済ましては俺の顔に関わる。
メンツに関わる。
プライドが許さないみたいな感じですね。
江戸っ子は意気地がない、弱虫だと言われるのは残念だ。
宿直をして鼻ったれ小僧にからかわれて、手のつけようがなくって、仕方がないから泣き寝入りにした。
どうすることもできなかったと思われちゃ、一生の名折れだ。
名折れっていうのは、名誉が傷つくとか、プライドが傷つくみたいな感じですね。
これでも元は旗本だ。
旗本の元は清和源氏で、多田の満仲の後裔だ。
色々ちょっと難しい言葉が出てきてるんですけど、ま、どれもですね、ま、昔の身分とか昔のいい家柄の名前を出しています。
なので坊っちゃんは、今はこうしてここでこんな田舎で先生をしてるけど、もともと自分はいい身分の由緒正しい家の出身だと。
その後裔、何だろう、子孫だと言っています。
こんな土百姓とは生まれからして違うんだって、ものすごく見下していますね。
百姓というのは農家の人のことです。
こんな田舎の百姓とは生まれが違う。
ただ知恵のないところが惜しいだけだ。
どうしていいかわからないのが困るだけだ。
困ったって負けるものか。
正直だからどうしていいか分からないんだ。
世の中に正直が勝たないで他に勝つものがあるか。
考えてみろ。
今夜中に勝てなければ明日勝つ。
明日勝てなければ明後日勝つ。
明後日勝てなければ下宿から弁当を取り寄せて勝つまでここにいる。
俺はこう決心をしたから、廊下の真ん中へあぐらをかいて夜の明けるのを待っていた。
あぐらってわかりますか?座り方でこういう座り方のことをあぐらと言います。
あぐらをかくって言いますね。
はい、あぐらをかいて廊下で待ってました。
寝ないでね。
勝つって言って。
蚊がぶんぶん来たけれども何ともなかった。
さっきぶつけた向こう脛を撫でてみると、なんだかぬらぬらする。
ぬらぬら、ぬるぬるでしょうか。
血が出るんだろう。
血なんか出たければ勝手に出るがいい。
坊ちゃん、生徒たちにからかわれた坊っちゃんは、生徒たちに勝つぞ!と言って、
足から血が流れてるのも気にせず、蚊がぶんぶんぶんぶん言ってる中、真っ暗な廊下であぐらをかいています。
はい。
そのうち最前、さっきですね。さっきからの疲れが出て、ついうとうと寝てしまった。
なんだか騒がしいので、目が覚めた時は「クソ!しまった!」と飛び上がった。
俺の座ってた右側にある戸が半分開いて、生徒が2人、俺の前に立っている。
俺は正気に戻って、あ、正気に帰って、はっと思う途端に、俺の鼻の先にある生徒の足を引っ掴んで力任せにぐいっと引いたら、そいつはドタリと仰向けに倒れた。
ざまを見ろ。
ざまあ見ろ。
残る1人がちょっと狼狽したところを、怖気づいた、狼狽したところを飛びかかって、肩を抑えて2、3度こづき回したら、
あっけに取られて、びっくりした様子で目をパチパチさせた。
さあ俺の部屋まで来いと引っ立てると、弱虫だと見えて、1も2もなくついてきた。
夜はとうに明けている。
もう朝です。
俺が宿直部屋へ連れてきたやつを詰問し始めると。問い詰める、なんであんなことしたんだって質問して問い詰める。
詰問し始めると、豚は、これ生徒たちのことを豚と言ってるんですかね。
ぶっても、これは何て読むんだろう?
叩いてもです。
ちょっと今一般的に使われるのと字が違います。
ぶっても叩いても豚だから、ただ知らんがなでどこまでも通す了見と見えて、決して白状しない。
しらばっくれてますね生徒たちは。
そのうち1人来る2人来る。
だんだん2階から宿直部屋へ集まってくる。
見るとみんな眠そうにまぶたを腫らしている。まぶたを腫らしている。
えっと、例えば泣いたりとか、あと寝不足だったりすると、まぶたが腫れますね。
まぶたを腫らしている。
ケチなやつらだ。
これもあのお、金とか物をあげないっていう意味のケチではなくて、ま、つまらないやつらだ。
一晩ぐらい寝ないで、そんな面をして、男と言われるか。面でも洗って議論に来いと言ってやったが、誰も面を洗いにいかない。
面って顔ね。
俺は50人余りを相手に約1時間ばかり、朝早くから眠いのに1時間ばかり押し問答をしていると。
押し問答っていうのは、お互いにね、主張をし合ってどっちも引かない。
どっちも相手の言うことを認めない。
押し問答。
この場合は坊っちゃんは昨日あんないたずらをしただろう。
で、生徒たちは知りません。
で、それでずっと押し問答をしているわけですね。
1時間ばかり押し問答をしていると、ひょっくり、ひょっこり、狸がやってきた。
校長先生が来ました。
後から聞いたら、小使が学校に、騒動があります、騒動があってますってわざわざ知らせに行ったのだそうだ。
これしきのことに、こんな小さいことに、これくらいのことに校長を呼ぶなんて意気地がなさすぎる。
それだから、中学校の小使なんぞをしてるんだ。
坊っちゃんは、もう全ての人のことを馬鹿にしていますね。
校長は一通り俺の説明を聞いた。
生徒の言い草、言い分?
言い訳もちょっと聞いた。
追って処分するまでは今まで通り学校へ出ろ。
追って何々するっていうのは、ま、後でするってことですね。
ま、処分は後でするから、考えるから、とりあえずは学校に行きなさい。
早く顔を洗って朝飯を食わないと、時間に間に合わないから早くしろと言って、寄宿生をみんな放免した。
放免というのは、自由にする。
開放して自由にするということです。
無罪放免とか言いますね。
手ぬるいことだ。
厳しさがない。優しすぎる。
俺なら即席に、すぐに寄宿生をことごとく退校してしまう。
退校という言葉が使われていますが、今は一般的には退学と言いますね。学校を辞めさせることを退学させると言います。
はい。
こんな悠長な、のんびりしたことをするから、生徒が寄宿員を馬鹿にするんだ。
その上俺に向かって「あなたもさぞご心配でお疲れでしょう。今日はご授業に及ばん。」と言うから俺はこう答えた。
いえ、ちっとも心配じゃありません。
こんなことが毎晩あっても命のある間は心配にはなりません。
授業はやります。
一晩ぐらい寝なくって授業ができないくらいなら頂戴した月給を学校の方へ割り戻します。
返します。
校長は何と思ったものか、しばらく俺の顔を見つめていたが、しかし顔がだいぶ腫れていますよと注意した。
なるほど、なんだか少々重たい気がする。
その上べた一面痒い。
べた一面というのは全体。
痒い。
蚊がよっぽど刺したに相違ない。
違いない。
俺は顔中ボリボリ掻きながら、顔はいくら腫れたって口は確かに聞けますから。
喋れますから。
授業には差し支えありませんと答えた。
校長は笑いながら、だいぶ元気ですねと褒めた。
実を言うと、褒めたんじゃあるまい。
冷やかしたんだろう。
褒めたわけじゃなくて、ちょっとからかったんだろう。
はい。
第4章以上です。
前回の第3章から引き続き、坊っちゃんは、生徒たちにちょっとからかわれて、いたずらをされていますね。
そしてまたいろいろね、文句を垂れている坊っちゃんでした。
はい。じゃあ今日はここまでです。
おしまい。
またね!